坪庭に自然素材を使って和風の空間に

「坪庭」という小さな庭を地元の自然素材を使って和風の空間に

坪庭とは【建物や垣根などで仕切られた小さな庭】

古来より坪庭の「坪」は「壺」とされており、四方を建物に囲まれ外側から閉ざされた中庭を単に「壺」といわれていました。建物の他目隠しとしての垣根や塀などで仕切られ、他の庭とつながっていない庭が本来の「坪庭」となります。現在では、小さい庭のことも坪庭と呼ばれることもあります。

竹垣(桂垣)によって仕切られた坪庭

坪庭の素材【自然素材を使った和風の庭】

坪庭は小さい空間であり部屋の間近で観賞するために、庭全体に目が行き届きます。そのため、坪庭つくりにおいて細部にまでこだわる必要があります。和風の坪庭に使われる素材としては、石組などで使われる自然石をはじめ、石燈籠や水鉢など加工された石材、庭木、下草などがあります。また、囲まれた空間が坪庭ですから目隠しとしての垣根の美しさも重要な素材となります。坪庭では、置かれる素材そのものの美しさや素材と素材の組み合わせの美しさなどが特に見どころとなります。 

坪庭で使われる素材

目隠し・仕切り【竹垣・袖垣】
坪庭をつくる上でもっとも重要な素材が目隠し・仕切りとしての垣根です。坪庭の四方が建物に囲まれている場合以外は目隠し・仕切としての垣根が必要となります。
 四方が建物に囲まれているケースは稀で、建物が三方(コの字型)もしくは二方(L型)に面した庭の部分を活かして坪庭とする場合がほとんどです。そのため、目隠し・仕切りのための垣根が必要となってきます。坪庭と庭を完全に仕切ってしまっては管理するために坪庭に入ることが出来ませんので庭を部分的に仕切る短い垣根「袖垣」を設置する方法もあります。
 和風の坪庭において目隠し・仕切りを設置するならば竹垣が最もよいのではないでしょうか。本物の竹を使った竹垣は経年変化を楽しむことできます。また十数年たってつくりかえた時の青竹による庭の新鮮さは何とも言えません。
庭石【石組】
庭石は大小さまざま、形も違い一つとして同じものがありません。庭石そのものが持つ形や色などの特徴を吟味し、どこに据え、石と石を組み合わせるのか、坪庭づくりの楽しみの1つです。
 庭石は採れる場所により山石、川石などに分けられます。茨城県つくば市にある筑波山では「筑波石」が採れます。筑波石は山石ならではのザラザラとした表面で、苔が生えやすく、全体が丸みをおびているのが特徴です。
 表面の鉱物が風化分解して赤錆色をした酸化鉄などの被膜を生じた「さび」は、やがて黒くなり様々な苔もついて「庭さび」を生じます。この経年変化も庭石の楽しみの一つとなります。庭石を使うことにより周りの庭木などと調和して落ち着いた雰囲気の坪庭とすることができます。
石燈籠
石燈籠は、庭の照明と添景を目的として坪庭に設置します。石燈籠には様々な形のものがあります。基本の形は、基礎・竿・中台・火袋・笠・宝珠の6つのパーツからなり、基礎の部分がなく竿が地中に入っている燈籠を「生け込み型」、火袋と笠のみで自然石の台石におかれる燈籠を「置き燈籠」と呼びます。坪庭は狭い空間であるため、坪庭に設置される石燈籠は生け込み型や置き燈籠がよいです。
 石燈籠における細部のつくりにも気を配ります。加工された石の表面が平らで角が張っていては坪庭には合いません。角に丸みがあり、表面もラインを保ちながら多少凸凹している「古代型」とよばれるつくりのものが坪庭にはよく合います。

水鉢【蹲踞(つくばい)】
水鉢は、庭の添景を目的として坪庭に設置します。水鉢を中心に「筧」とよばれる給水装置、「海」とよばれる排水口、海を囲む「前石」や「石組」などを組合わせたものが「蹲踞」と呼ばれます。蹲踞は茶庭から住宅の庭に取り入れられたものです。
 水鉢の種類も数多くあり、自然石に水穴を掘った水鉢や石を好みの形に加工して創り出されたものなどがあります。写真の坪庭に置かれた水鉢は、麦踏み型と呼ばれる水鉢で実際に農家で使われていたものに水穴を掘ったものです。また、水穴が大きくつくられた水鉢を置くことにより野鳥が水浴びをしに来たりする事もあります。


坪庭の施工例

石組と砂利敷きでつくる店舗脇の坪庭/茨城県つくば市
石組と砂利敷きでつくる店舗脇の坪庭/茨城県つくば市庭が平面的にならないように、六方石と呼ばれる細長い石を使って石組みをしました。また、鉢物をおいて花や緑が楽しめるように、石臼などの平らに加工された石を置きました。

自然石の石組と網代垣でつくる坪庭/茨城県竜ケ崎市
自然石の石組と網代垣でつくる坪庭/茨城県竜ケ崎市網代垣で目隠しをつくり、自然石の石組と砂利敷きでつくった坪庭です。除草作業が楽なように下草は地植えにせず鉢で楽しめるようにしました。ヤマモミジを植え、スッキリとまとめました。

アプローチ脇の三角形の坪庭と駐車場脇の坪庭/茨城県つくば市
アプローチ脇の三角形の坪庭と駐車場脇の坪庭/茨城県つくば市玄関脇の小さな三角のスペースに庭を作りました。屋根の下で雨がかからないため、下草のみとしました。オンジャクとよばれるつくば市産の石で石組みをして、お客様所有の陶器を添えました。

 

軽トラックの荷台につくる坪庭・ミニガーデン

稲ワラを使って軽トラックに坪庭をつくる【軽トラガーデン2020年】
稲ワラを使って軽トラックに坪庭をつくる【軽トラガーデン2020年】/坪庭稲わらを使う庭の風物詩として有名なのが「雪吊り」と「わらボッチ」。雪吊りで使われる縄は、自分の手で綯い、小手縄とよばれる細い縄としました。石を少なくして、あっさりとした坪庭に仕上げました。
秋の田園風景を坪庭に【軽トラガーデン2019年】
秋の田園風景を坪庭に【軽トラガーデン2019年】/坪庭つくば市で採れるオンジャクで石積みをして、刈り取られた稲株を植えました。垣根は、刈り取った稲を干す「おだかけ」をイメージして、田に生えた2番穂を使って垣根としました。秋の田園風景をイメージして坪庭をつくりました。
じゃかごと枯れ木でつくる坪庭【軽トラガーデン2018年】
じゃかごと枯れ木でつくる坪庭【軽トラガーデン2018年】/坪庭オンジャク(つくば市で産出する石の名前、現在は採れない)の小判石と「じゃかご」で野に流れる川辺を再現し坪庭としました。枯れ木は、杉をさらしたものです。

石仏と松の雪吊りでつくる坪庭【軽トラガーデン2017年】
石仏と松の雪吊りでつくる坪庭【軽トラガーデン2017年】/坪庭クロマツの盆栽に金の糸で雪吊りをし、色を染めた砂利で水面に映る月を表現し、冬支度の整った庭の一角を再現しました。枠は、着色した砂による版築です。