宝篋山からの眺め・見どころ
宝篋山(ほうきょうさん)は、茨城県つくば市と土浦市との境にあり標高は461mです。筑波山の南東に位置し、つくば市小田にあることから小田山ともよばれています。極楽寺コース・常願寺コース・小田城コース・新寺コース・山口コースなど複数の登山道があります。山頂からの眺めもよく、東を向けば霞ヶ浦、北西には筑波山、日光連山を望むことができます。
眺望もさることながら、登山途中の自然の岩肌を伝う沢や水音、自然の豊かさに心打たれる一方で、山頂には宝篋山の名の由来ともなった石造りの宝篋印塔(供養塔)、極楽寺跡には五輪塔やお地蔵様があり、古代の人々の石造技術の高さに感心させられます。自然に手を加えず名石・奇岩を神仏や縁起物に見立て崇拝した筑波山とは違った、自然と人工物が調和した山と言えます。
つくば市小田より眺める宝篋山
宝篋山山頂より筑波山を眺める|左奥に見えるのが日光連山
宝篋山山頂より霞ヶ浦を望む
宝篋山の成り立ちと石たち
宝篋山を成り立たせているものは、変成岩と花崗岩です。変成岩は、何億年という大昔に泥や砂などが堆積して固まってできた堆積岩が下からマグマの圧力や熱により変成したもので、主に黒雲母片岩ないし黒雲母片麻岩とよばれています。変成作用を受けて、雲母や角閃石などの鉱物が一定の方向性を持って配列する特徴があります。そのため、一つの面に沿って平らに薄く剥がれやすくなっています。薄く剥がれやすい特徴を活かして、つくば市や土浦市などの寺社や古い農家の庭の敷石、建物の基礎などに多く利用されていました。この変成岩はつくばの石の歴史で最も古く、古墳時代の石棺などにも利用されており「オンジャク」と呼ばれていました。平安時代末期から江戸時代にかけて、石を温めて真綿や布などでくるみ懐中に入れて胸や腹などの暖を取るために用いた道具を温石(オンジャク)といい、これに由来するそうです。→宝篋山の成り立ちの詳しい情報
宝篋山中に露頭する変成岩|横方向に割れ目がはいっている
割れ目に沿って矢穴を掘る先人たちの仕事跡|宝篋山
変成岩の岩肌を伝う沢|水音が心地よい
宝篋山をつくっている石のもう一つは、花崗岩です。花崗岩は「御影石」とも呼ばれ、白く材が均一で加工しやすいのが特徴です。日本庭園に代表される石燈籠や水鉢などがつくられる石材です。つくば市、土浦市、かすみがうら市、石岡市に跨る宝篋山界隈には鎌倉時代から室町時代につくられた五輪塔や宝篋印塔などの供養塔が数多く現存し、古くから石材加工業が盛んでした。
宝篋山にみる石造品
宝篋山には、極楽寺とよばれる寺跡があり、鎌倉時代に忍性とよばれる僧がつくったとされています。忍性は大蔵派とよばれる石工集団を連れてきてつくばの地に数多くの石造品を残しました。極楽寺コースより宝篋山へ登ると先人たちの残した素晴らしい石造物に出会えます。
宝篋山にみる石造品|極楽寺コース
- 石造地蔵菩薩・湯地蔵石仏龕(ゆじぞうせきぶつがん)
- つくば市小田の極楽寺跡にあります。花崗岩一石に本体及び蓮華座、そして杖、宝殊、頭光(ずこう)を高浮彫風に彫られています。像高は157.5cmで、茨城県指定文化財になっています。この両側に側壁を立て、その上に中央に露盤を彫りだした屋蓋(おくがい)を乗せて龕(厨子)を形づくっています。本像の奥壁左右には刻文があり、正応2年(1289)鎌倉時代後期に作られたそうです。俗に「湯地蔵」とよばれ安産と乳が出るようにと地元の人々に守られてきました。【つくば市の文化財・説明文より】 ふくよかで優しいお顔立ちの地蔵菩薩様/つくば市小田
- 極楽寺奥の院跡五輪塔
- 花崗岩でつくられています。総高276.5cm。つくば市小田の極楽寺跡にあります。地輪は極めて整美な彫成で、水輪は満々たる張りを示しています。火輪の軒は端に至り鋭く豪快に反りあがり、軒口は鮮やかなまでに垂直に整えられています。風・空輪は一石で風輪は重厚な曲線を描き、空輪ははち切れんばかりの張りがある。小田極楽寺跡に残る西大寺系石工(大蔵派)の、鎌倉時代後期に作られた全国的にも珍しい本格的な五輪塔とされています。【つくば市の文化財・説明文より】
つくば市指定文化財になっております。現代のように硬い石を加工する道具やダイヤモンド工具などの切削機械がない時代に、手道具のみで石を寸分狂わず成形する技術には驚きます。先人たちの技術の高さを見ることができます。 凛とたつ極楽寺奥の院跡五輪塔の姿/つくば市小田 - 宝篋山宝篋印塔
- 宝篋山山頂にあり、宝篋山の名の由来ともなっている石造宝篋印塔です。最初、この塔を見たとき「どうやってもってきたのだろう」と思いました。宝篋山山頂付近には、変成岩(黒っぽい石)しかなく、宝篋印塔に使われている花崗岩は山麓に多く産出しているためです。後日、地質図で調べてみると山頂付近に花崗岩が点在しており、合点がいきました。→筑波地域の庭石について
総高201cm。基礎は二石で、反花座は間弁のある複弁蓮華文を刻みだしています。塔身の四面に蓮華座上の四仏(東面は薬師、南面は釈迦、西面は阿弥陀、北面は弥勒)を彫り、周囲を二重円相光形に彫りくぼめています。笠下は三段で最下段に面取りを施し塔身幅に合うように細工しています。鎌倉中期頃に製作されたと考えられています。茨城県指定文化財。【つくば市の文化財・説明文より】 宝篋山山頂にそびえる宝篋印塔|山頂付近に産出する花崗岩でつくられた - 路傍の石造物たち
- 登山等の傍らに佇む石仏や五輪塔も見どころの一つです。
宝篋山はまさに庭の世界
自然と人工物とが調和
宝篋山には、