庭石の魅力|茨城県を代表する庭石「筑波石」

筑波石の良さを知って価値ある庭へ

「庭石」とは庭に置く(据える)石のことです。石は、庭にその土地の特徴をだすことができる最大の材料です。古平園の地元茨城県では、「筑波石」が採れます。筑波石は、茨城県つくば市に位置する筑波山で採れ、地質学的には斑レイ岩と呼ばれる種類の石です。特徴としては、黒っぽい色をしており、形は角が少なく全体的に丸みを帯びています。表面は山石ならではのザラザラとしています。庭において、一石でみせる景石や石を組み合わせる石組み、石積みなどに使われます。筑波石の特徴的な黒色は、茨城県桜川市でとれる御影石(花崗岩)が細かくなった白色の砂利とよく合います。砂利の白さが筑波石を引き立ててくれます。地元で採れる庭の材料を活かすことにより地域性をだした庭となります。

筑波石を使った庭/庭、筑波石、庭石

筑波石を使った庭

筑波石の歴史ー悠久の時を経て地上に現れた筑波石ー

「筑波石」は茨城県南東部(つくば市、桜川市、石岡市)に位置する筑波山で採れる石です。筑波山は、男体山、女体山とよばれる二つの連なった峰が特徴的です。標高は、山頂である女体山が877m、男体山が871mとそれほど高くありませんが、平地から直接そびえ、周囲の山地より高いために、関東平野のかなり遠方から二つの峰もしくは一つにとがった峰として眺めることができます。筑波山の中腹や山麓で採れる黒灰色をした石が「筑波石」です。

筑波石が採掘される筑波山/向かって右が山頂の女体山(877m)、左が男体山(871m)

筑波山|向かって右が山頂の女体山(877m)、左が男体山(871m)

 

筑波山の成り立ちから筑波石を見る
2憶四千万年前という気も遠くなりそうな大昔、日本が影も形もないころに、現在の筑波山の位置近くに海底火山ができました。約7500万年前に最初に噴き上げて途中で固まったマグマは、黒っぽい岩になり、続いて約6300万年から6000万年前に噴き上げて地下の深いところで固まったマグマは白い岩となりました。この黒っぽい岩が筑波石である斑レイ岩になり、白っぽい岩が御影石ともよばれる花崗岩になりました。その後、斑レイ岩と花崗岩は地殻変動によって持ち上げられ、風雨などによる浸食を受けて現在の形となりました。筑波山の成り立ちからみた筑波石/筑波石、筑波山、石
筑波山の地形と筑波石|筑波山の斑レイ岩体から生まれる筑波石
筑波山は山頂から山腹にかけて急斜面、山麓は緩い斜面となっています。この緩い斜面の発達は、山麓が花崗岩からなることと深い関係があります。花崗岩は、風化するとマサ状(砂のようなもの)になり、お互いの接着力が弱く、急斜面をつくることができません。そのため、大きな石などが堆積する土台をつくりやすい性質があります。花崗岩の風化物がつくった緩斜面地帯に山頂から山腹付近の石が土石流によって押し流され、土や石の堆積物をつくります。筑波山においては、斑レイ岩でできた山頂・山腹部から大小さまざまな斑レイ岩の石が土とともに流されてきました。その斑レイ岩の石たちを土砂の中から掘り出したものが「筑波石」です。 写真は、筑波山山麓に広がる緩斜面地帯でここから筑波石が産出します。↓筑波山の地形と筑波石/緩斜面堆積物、筑波石、筑波山
信仰の対象とされてきた筑波石|筑波山の名石・奇岩たち
筑波山は男体山頂と女体山頂にそれぞれご神体があり、山頂に鎮座する神々を拝する場として筑波山神社があります。筑波山神社には、かつて筑波山寺があり平安時代の初めに学僧である徳一(とくいつ)が開いたといわれています。江戸時代初期には、知足院中禅寺として徳川幕府の信仰を受け多くの建物がつくられました。また、つくば道などが整備され多くの参拝客でにぎわっていました。このように二つの峰をご神体として、古くから信仰を集めてきた筑波山。筑波山の山頂から山腹付近には女体山を中心に数多くの奇岩、名石があります。筑波山の奇岩や巨石、登山道に転がる名もない石たちに思いをはせ、庭に筑波石を使って筑波山の景色や雰囲気を楽しむのはいかがでしょうか。
出船入船と呼ばれる筑波山の名石、両側の巨石に支えられ斜めにせり出すように留まり気勢を感じる。【写真左】 登山道に転がる小さな石にも見どころがある。【写真右】筑波山の名石/出船入船、筑波石、筑波山筑波山の名石/筑波石、筑波山

筑波石の見どころ

筑波石の表情・石質
庭石には、産出する場所によって山石、川石、海石などの種類があります。川石は、川で採れる石のことで表面は水の力で磨かれツルツルとして、角がなく丸い感じの石がほとんどです。それに対して山石は、表面がザラザラとしていて角が張っているものが多いです。山石でも表面の肌の違いによって、「割肌」と「野面」に分けられます。「割肌」はほとんど風雨の浸食を受けていない割れたばかりの石で丸みはなく角張っています。一方、「野面」は、山で長い間風雨の浸食を受けて表面に凸凹があります。筑波石のほとんどは「野面」をもった石であり、よく観察してみると、白い部分がくぼみ、暗緑色の部分が突出しています。これは、斜長石(白い部分)が角閃石(暗緑色の部分)に比べ風化しやすいためと考えられています。表面の凸凹が著しいものをガマガエルの背中のゴツゴツした肌に例えて「ガマ肌」と呼ばれています。山頂や山腹付近から転がってくるため石と石がぶつかり合い、角が取れ丸みを帯びているのも特徴です。筑波石の表情/筑波山、筑波石、庭石
色の変化「さび」
石は不変と思われておりますが、少しずつ変化しています。表面の鉱物が風化分解して赤錆色をした酸化鉄などの被膜を生じた「さび」は、庭石に用いる前の風化による「山さび」だけでなく、庭石として庭に据えられてからもさらに風化受けて、周りの庭木などと調和した「庭さび」を生じ、様々な苔もついて、古色と風格が備わります。
 また、地中から出された筑波石の表面には土が付着しており、しっかりと洗浄をすることも重要な作業となります。周りについた汚れを洗浄し筑波石本来の色となり、ここから庭さびが生まれ落ち着いた雰囲気となります。写真上は、据え付けられたばかりの筑波石の表情。写真下は、庭さびがのり苔むした筑波石の表情。庭さびがのり苔むした筑波石の表情|庭石、筑波石、筑波山

庭における筑波石の使われ方

庭石は大小さまざま、形も違い一つとして同じものがありません。庭石そのものが持つ形や色などの特徴を吟味し庭のどこに据えるのか、庭づくりの最大の楽しみではないでしょうか。庭において、石が使われる空間といえば一石で楽しむ「景石」、石と石を組んで楽しむ「石組み」、庭に高低差がある場合の土留めとして利用される「石積み」など様々な場所に利用されます。

  • 石組み|石と石を組み合わせて楽しむ
  • くつぬぎ石|リビングから庭へと降りるための平らな石
  • 飛石|庭の園路として、一石一石を楽しむ
  • 石張り|庭の園路として、石を一面に張る
  • 石積み|石を組み合わせて庭の高低差を活かす
  • 庭以外の筑波石の使われ方|石碑としての筑波石